ステマ規制とは?口コミのお願いが問題になる境界線

規制の要点は「事業者の表示」なのに「そう見えない」こと

景品表示法のステマ規制(正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として指定されたもの)は、大まかに次の2つが揃うと対象になります。

  1. その投稿や口コミが、実質的に「事業者(お店)の表示」であること
  2. 一般の消費者から見て、それが事業者の表示だと分かりにくいこと

「お店の表示」になるかどうかは、お店が投稿の内容に関わっているか、投稿者に見返り(金銭・割引・無料提供など)を渡しているか、といった点から総合的に判断されます。逆に言えば、お客様が自分の意思で、自分の言葉で書いた口コミは、お店がお願いしたきっかけがあっても、事業者の表示にはなりにくいと整理されています。細かい線引きは、消費者庁の「ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方」などの資料で確認してください。

Googleや口コミサイトのルールという「もう1つの縛り」

法律とは別に、Googleビジネスプロフィールや各口コミサイトには独自のポリシーがあります。Googleは、口コミと引き換えに割引や特典を提供すること、自作自演、スタッフによる投稿、良い評価だけを選んで依頼すること(悪い評価は書かせないよう仕向けること)を禁じています。

つまり、「法律上はグレー」でも「Googleのポリシーでは明確に違反」というケースがあり、違反すると口コミの削除やプロフィールの制限につながります。お店としては、法律とプラットフォームのルールの両方で安全な方法を選ぶのが現実的です。

お店でよくある7つの場面|OK・NG・グレーの整理

場面 判断の目安 安全な形
会計時に「よかったら口コミを書いてください」と声をかける OK。見返りなし、内容は自由 良い点も改善点も率直に、と添える
割引やプレゼントと引き換えに「星5でお願い」と頼む NG寄り。見返り+評価の指定 やらない
評価を問わず、口コミを書いた人全員に特典を渡す 法律上は表示の仕方次第だが、Googleのポリシーでは違反 Googleの口コミでは行わない。自社アンケートへの謝礼に切り替える
スタッフ・家族・知人が客のふりをして書く NG。自作自演 やらない。スタッフが書くなら所属を明示
口コミ代行業者に依頼する NG。ガイドライン違反かつ規制のおそれ 契約しない
悪い評価は直接お店に、良い評価はGoogleに、と誘導する Googleのポリシーで禁止 全員に同じ案内をする
お客様の口コミを自社サイトに転載する 条件付きOK 本人の許可、原文のまま、良い声だけを並べて誤認させない

表の「判断の目安」は一般論です。個別の事情によって評価が変わることがありますので、迷う場合は消費者庁の資料や専門家に確認してください。

特に注意したい「見返り」の範囲

見返りは現金だけではありません。次回割引、ドリンク1杯サービス、無料体験、抽選の応募権、ポイント付与なども見返りに当たり得ます。「金額が小さいから大丈夫」とは考えないほうが安全です。

「お願いのきっかけ」と「内容への関与」は別もの

QRコードを渡す、声をかける、LINEでお礼と一緒にリンクを送る、といった「きっかけ作り」は問題になりにくい行為です。一方、「こう書いてください」と文面を渡す、良い評価だけを頼む、見返りを渡す、といった「内容への関与」が加わると、事業者の表示に近づきます。この違いを覚えておくと、大半の場面で判断できます。

安全な口コミのお願い方(言い回しの例)

声かけの例(会計時・施術後)

  • 「もしよければ、率直な感想をGoogleの口コミに書いていただけるとうれしいです。良かった点も、直したほうがいい点も、そのままで大丈夫です」
  • 「今日のご感想を、ぜひ口コミで教えてください。次に来る方の参考になります」

避けたい言い方は、「星5でお願いします」「高評価をいただけたら次回〇〇円引きです」「悪い点は直接言ってくださいね、良い点はGoogleに」の3つです。いずれも評価の指定、見返り、選別のどれかに当たります。

POP・カード・LINEの文例

ご来店ありがとうございます。当店のサービスについて、率直なご感想をお聞かせください。良い点も改善点も、今後のお店づくりに活かします。(QRコード)

LINEでお礼を送るときも同じで、「感想を書いていただけるとうれしいです」までにとどめ、特典やクーポンとは別のメッセージにします。声かけの具体的な流れは「お客様に口コミをお願いする方法」で、集める仕組み全体は「Googleの口コミを増やす方法」で解説しています。

アンケートと口コミを分ける

「特典を渡して感想を集めたい」なら、Googleの口コミではなく、自社のアンケートに謝礼を出す形にします。アンケートの結果をホームページに載せるときは、「アンケートに回答いただいた方の声(謝礼あり)」のように、条件を書いて掲載します。こうすれば、お客様の声を集めつつ、口コミの信頼性も守れます。

インフルエンサー・SNS投稿・モニター募集の表示ルール

依頼した投稿には「広告」「PR」「提供」を分かる場所に

商品やサービスを無料で提供して投稿を依頼する場合、その投稿はお店の表示と見なされ得ます。このとき、投稿を見た人が「これは広告だ」と分かるように、「広告」「PR」「〇〇(店名)から提供を受けています」などの表示が必要です。

表示の位置も重要で、長文の末尾や大量のハッシュタグの中に紛れさせる、小さく薄い文字にする、といった形は「分かりにくい」と評価されるおそれがあります。投稿の冒頭や、写真のすぐ近くに置くのが基本です。

モニター募集・無料体験と引き換えの投稿

「無料体験のかわりにSNSで投稿してください」というモニター募集も、同じ考え方です。投稿する側に「PR」表示の付け方を具体的に伝え、内容は自由に書いてもらいます。「良いことだけ書いて」と条件を付けると、見返りと内容への関与の両方が揃ってしまいます。

自社スタッフの投稿は所属を明示する

スタッフが自分のSNSでお店を紹介するのは構いませんが、「〇〇店で働いています」と分かる形にします。客のふりをした投稿は、法律以前に信頼を失います。

判断に迷ったときの3つの問いと、違反したらどうなる?

迷ったら、この3つの問いで確認する

  1. お店は投稿の内容に関わっているか(文面の指定、評価の指定、良い声だけの依頼)
  2. 投稿者に見返りを渡しているか(割引・無料提供・プレゼントを含む)
  3. 投稿を見た人は、お店が関わっていると分かるか(「PR」などの表示があるか)

1か2が「はい」で、3が「いいえ」なら、やり方を変えるべきサインです。1と2の両方が「いいえ」なら、お願いの仕方としては安全な側にあります。

違反した場合の一般的な帰結

ステマ規制に違反すると、消費者庁から措置命令(表示の差し止めや再発防止の命令)の対象になり、事業者名が公表されることがあります。金銭的な罰則の有無や細かい手続きは制度の詳細によるため、ここでは断定しません。実務上は、行政処分よりも「サクラだった」と知られたときの信用の損失のほうが、お店には大きな打撃になります。

過去に集めてしまった口コミはどうする?

以前に特典付きで依頼した口コミがある場合、まずはその方法を今日で止めることが先です。そのうえで、今後は率直な感想を集める仕組みに切り替え、低評価の口コミにも誠実に返信する運用を続けてください。返信の書き方は「Googleの口コミ返信の書き方と例文」を参考にしてください。

繰り返しになりますが、この記事は法的助言ではありません。個別の判断は、消費者庁の資料や弁護士などの専門家に確認してください。クーポンや割引表示の注意点は「クーポン・割引表示の注意点」にまとめています。地域ごとの口コミの重みや競合の状況は「地域別ガイド」もあわせて参考にしてください。

よくある質問

お客様に口コミをお願いすること自体は違法ですか?

違法ではありません。見返りを渡さず、内容を指定せず、率直な感想を書いてもらう形なら、お願いのきっかけ作りは問題になりにくいと整理されています。

「口コミを書いてくれたらドリンク1杯無料」は大丈夫ですか?

法律上の評価は表示の仕方によりますが、Googleのポリシーでは口コミと引き換えの特典が禁止されています。Googleの口コミでは行わず、自社アンケートへの謝礼に切り替えるのが安全です。

インフルエンサーに「PR」を付けてもらえば、何を書いてもらってもいいですか?

「PR」表示は最低限の条件で、内容が事実と違えば別の不当表示(優良誤認など)の問題になり得ます。内容は投稿者の率直な体験にとどめてください。

自分のお店の口コミを、自分で書き込むのはなぜダメですか?

お店の表示なのに第三者の感想に見えるため、ステマ規制の典型例になり得ます。Googleのポリシーでも禁止されており、発覚すれば口コミの削除やプロフィールの制限、信用の低下につながります。

ステマ規制の詳しい内容はどこで確認できますか?

消費者庁が公開している「ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方」と、その運用基準が一次情報です。この記事は一般論であり、法的助言ではありません。

まとめ

  • ステマ規制は、お店が関わる表示を第三者の感想に見せかけることを禁じる制度。2023年10月施行で、対象はお店側
  • 口コミのお願い自体はOK。見返り、評価の指定、自作自演、良い声だけの依頼が加わるとNGに近づく
  • Googleのポリシーは法律より厳しく、口コミと引き換えの特典は禁止。両方で安全な方法を選ぶ
  • 安全な言い回しは「率直な感想を、良い点も改善点もそのまま」。特典はGoogleの口コミではなく自社アンケートへ
  • インフルエンサー・モニター投稿は「PR」「提供」を目立つ位置に。内容は自由に書いてもらう
  • 迷ったら「内容への関与」「見返り」「広告と分かるか」の3つの問いで確認。法的助言ではないので、消費者庁の資料で最終確認を
この記事を書いた人:坂部 幸成(さかべ ゆきなり)

株式会社Shamoji 代表/店舗向けホームページ制作「HARE PAGE 店舗」運営

Web制作・運営、広告運用代行、SEO・LLMOコンサルティング、AI活用支援を手がける 株式会社Shamoji(2022年設立)の代表。店舗向けホームページ制作・運用サービス「HARE PAGE 店舗」を企画・運営し、飲食店・美容室・サロン・整体院・不動産会社のサイト制作と地域検索の設計を担当しています。記事の内容は執筆時点の一般的な情報であり、各サービスの最新の仕様・料金は公式情報をご確認ください。