景品表示法の基本:優良誤認と有利誤認
景品表示法が禁止する「不当表示」は、大きく2種類に分けられます。店舗の表示は、ほとんどがこのどちらかに関わります。
優良誤認表示:品質・内容を実際より良く見せる
商品やサービスの品質・規格・内容について、実際よりも著しく優れていると誤解させる表示です。「国産」と書いて外国産を出す、「無添加」の根拠がない、「〇〇に効く」と裏付けなく書く、などが例です。行政から根拠となる資料の提出を求められ、期限内に出せない場合は不当表示とみなされる仕組み(不実証広告規制)もあります。
有利誤認表示:価格・条件を実際より得に見せる
価格や取引条件について、実際よりも著しく有利だと誤解させる表示です。実際には売っていない「通常価格」を並べて安く見せる二重価格表示、根拠のない「他店より安い」、実際には限定していない「期間限定」などが典型です。クーポン・割引表示のトラブルは、ほぼこちらに当たります。
対象になる「表示」の範囲は広い
ホームページ、チラシ、看板、メニュー、Googleビジネスプロフィール、SNSの投稿、LINEの配信、口頭のセールストークまで、お客様に向けた表示はすべて対象です。「SNSだから」「クーポンアプリだから」という区別はありません。個人経営のお店も、規模に関係なく対象です。
二重価格表示の考え方:「通常価格」と書ける条件
「通常価格5,000円→初回3,000円」のような表示を二重価格表示と呼びます。表示そのものは禁止されていません。問題になるのは、比較に使う価格(通常価格)が実態と合っていない場合です。
過去の販売価格を「通常価格」にする場合
「通常価格」「定価」と書けるのは、最近の相当な期間、実際にその価格で販売していた場合に限られます。消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」では、目安として、セール開始前の一定期間(8週間程度)のうち過半でその価格で販売されていたか、といった考え方が示されています。数字の詳細は必ず原文で確認してください。
逆に、次のような表示は有利誤認になるおそれがあります。
- 一度も売ったことのない価格を「通常価格」として並べる
- 昔は売っていたが、ここ数か月はセール価格でしか売っていないのに「通常価格」と書く
- 開店以来ずっと「オープン記念価格」のままで、通常価格に戻したことがない
将来の販売価格を比較に使う場合
「今なら3,000円、来月から5,000円」のように将来の価格を比較対象にする表示は、実際にその価格で販売することが確実な場合でなければ、問題になるおそれがあります。「値上げ予定」と書いたのに値上げしなかった、という状態は避けてください。
他店の価格や「相場」を比較に使う場合
「他店平均〇円のところ当店〇円」のような比較は、調査の方法・時期・対象を示せることが条件になります。裏付けがない相場比較は、書かないのが無難です。メーカー希望小売価格を比較に使えるのは、メーカーが実際に設定・公表している価格に限られます。
二重価格表示のチェックリスト
- 比較に使う価格で、実際に販売した実績がある
- その価格での販売が、最近の一定期間続いていた
- セール終了後は、通常価格に戻す予定である
- 比較に使う価格の意味(通常価格・他店価格・メーカー希望小売価格)を明記している
- 初回限定なら「初回のみ」、条件があるなら条件を金額と並べて書いている
「地域一番」「一番安い」「満足度〇%」の根拠の示し方
順位や最上級の表現は、お客様の目を引く分、根拠を強く求められます。消費者庁も、「1位」「一番」といった表示(いわゆる「ナンバー1表示」)について実態調査の報告書を公表し、根拠のない表示を問題視しています。
順位・最上級の表示に必要なもの
- 客観的な調査に基づいていること(自社の思い込みや、一部のお客様の声ではない)
- 調査結果を正確に引用していること(都合の良い項目だけ切り取らない)
- 出典・調査時期・調査範囲(地域、対象店舗、回答者数)を、表示の近くに書くこと
「地域で一番選ばれている」「この地域で一番安い」と書くなら、誰が・いつ・どの範囲で調べたかを示せなければなりません。示せないなら、書かない判断をします。
「当社調べ」「お客様アンケート」の落とし穴
自社のアンケートで「満足度98%」と書く場合も、回答者数・時期・設問を示す必要があります。10人中9人が満足と答えたアンケートを「満足度90%」と大きく書くと、実態よりも優れていると誤解させるおそれがあります。調査の条件は隠さず、読める大きさで添えてください。
事実で語る言い換え
| 避けたい表現 | 言い換えの例(事実である場合のみ) |
|---|---|
| 地域で一番人気 | 〇〇(地名)で20年営業しています |
| どこよりも安い | 初回カウンセリング無料。料金はすべて税込表示です |
| 満足度98%(根拠なし) | 2025年〇月のアンケート(回答〇名)で、〇%の方が「また来たい」と回答 |
| 実績多数 | 累計〇件の施術(〇年〇月〜〇年〇月、自社集計) |
期間限定・先着・特典の書き方と、景品・ステマ規制
「期間限定」「先着〇名」「今だけ」は、実際にそのとおりであれば問題ありません。問題は、限定していないのに限定のように見せる表示です。
| 避けたい表示 | 何が問題か | 書き換えの例 |
|---|---|---|
| 「期間限定」なのに毎月延長している | 実際は常時その価格で、有利誤認のおそれ | 期間を明記し、終了したら本当に終える。常時なら通常価格として出す |
| 「先着10名」なのに全員に適用 | 限定の実態がない | 実際の枠数を書く。枠がないなら「先着」を使わない |
| 「今だけ半額」が半年続いている | 「今だけ」の根拠がない | 「〇月〇日まで」と日付を入れる |
| 「最大50%オフ」で対象が1品だけ | 大半の商品には当てはまらず、誤認のおそれ | 「〇〇が50%オフ」と対象を明記するか、「一部商品」と条件を添える |
| クーポンの条件を小さく別の場所に書く | 条件が読み取れず、有利誤認のおそれ | 「初回のみ」「〇円以上の会計で」を、金額と同じ大きさで並べる |
クーポンに書いておく条件の型
「【初回限定】カット+カラー 通常価格〇円→〇円(税込)/有効期限:〇年〇月〇日まで/他の割引との併用不可/ご予約時に『ホームページを見た』とお伝えください」のように、金額・条件・期限・併用の可否を1か所にまとめます。クーポンで来たお客様がリピートしない問題は、表示とは別に設計が必要です。「クーポン客がリピートしない理由と対策」を参考にしてください。
「値引き」は原則として景品ではない
景品表示法には、景品(おまけ・プレゼント)の上限を定める規制もあります。ただし、クーポンによる値引きや同じ商品の増量など、取引の相手に対する「値引き」と認められるものは、原則として景品規制の対象外です。一方、来店者全員に配るプレゼント(総付景品)や、抽選で当たる特典(懸賞)には上限額が定められています。たとえば総付景品は、取引価額の2割まで(取引価額が1,000円未満なら200円まで)が目安とされています。詳細は消費者庁の資料で確認してください。
口コミ特典はステマ規制に注意
「口コミを書いてくれたらドリンク1杯無料」のような特典は、景品の問題より先に、ステマ規制(2023年から景品表示法の不当表示に追加)と、Googleなど各サービスのガイドライン違反の問題になります。特典と引き換えに口コミを頼む設計は避けてください。詳しくは「口コミのお願いはどこまでOK?ステマ規制で店舗が気をつけること」で解説しています。
整体・エステ・美容の効果表現は別の法律も関わる
「〇〇が治る」「短期間で痩せる」といった効果の表示は、景品表示法の優良誤認に加えて、医師法や薬機法などの問題にもなります。整体・整骨院の表現は「整体・整骨院のホームページで気をつける広告表現」で詳しく解説しています。
表示を出す前のチェックリストと、迷ったときの相談先
公開前チェックリスト
- 比較に使う価格は、実際に販売した実績があるか
- 「一番」「唯一」「地域トップ」の根拠と出典を、表示の近くに示せるか
- 期間・数量の限定は、実態と一致しているか
- 割引の条件(初回のみ、併用不可、〇円以上)は、金額と同じ場所・同じ大きさで書いているか
- 税込・税別の表示は統一しているか(消費者向けは総額表示が原則)
- 効果や品質の表現に、裏付けとなる資料があるか
- 口コミ特典・SNS投稿特典が、ステマ規制に触れないか
- メニューページ・チラシ・Googleビジネスプロフィール・SNSで、同じ内容になっているか
料金の見せ方全体は「メニュー・料金ページの作り方」でも解説しています。
相談先
消費者庁のWebサイトには、景品表示法の解説や「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」などの資料が公開されています。各都道府県にも景品表示法を担当する窓口があり、表示についての相談を受け付けています。業界によっては、公正競争規約を運用する公正取引協議会が具体的なルールを定めていることもあります。判断に迷う表示は、公開前に弁護士などの専門家に確認するのが確実です。
地域によって競合の表現の傾向は違いますが、「近くのお店が書いているから安全」とは限りません。地域での見つかり方は「地域別ガイド」を参考にしつつ、表示の根拠は自店で確かめてください。
よくある質問
二重価格表示は禁止なのですか?
禁止ではありません。比較に使う価格が実態に合っていれば問題ありません。実際に販売していない価格を「通常価格」として並べることが、有利誤認に当たるおそれがある、という整理です。
個人店でも景品表示法の対象になりますか?
なります。事業者の規模は関係ありません。個人経営の飲食店・サロン・整体院・教室も、お客様向けの表示はすべて対象です。
「オープン記念価格」をずっと続けるのは問題ですか?
記念価格が実質的に通常の価格になっているなら、比較に使う「通常価格」に実態がなく、有利誤認のおそれがあります。期間を決めて終えるか、その価格を通常価格として表示し直すのが安全です。
「地域で一番」と書くにはどうすればいいですか?
客観的な調査に基づき、出典・調査時期・調査範囲を表示の近くに書く必要があります。自社の感覚や一部のお客様の声だけでは根拠になりません。示せる根拠がないなら、営業年数や具体的な実績など、事実で語る表現に置き換えてください。
まとめ
- 景品表示法は、誤解させる表示(優良誤認・有利誤認)と過大な景品を禁止する法律。クーポン・割引表示も対象
- 「通常価格」と書けるのは、最近の一定期間、実際にその価格で販売していた場合
- 「地域一番」「一番安い」「満足度〇%」は、客観的な調査と、出典・時期・範囲の表示が必要
- 「期間限定」「先着」「今だけ」は実態と一致させる。条件は金額と同じ場所・大きさで
- 値引きは原則として景品ではないが、プレゼントや抽選には上限がある。口コミ特典はステマ規制に注意
- 迷ったら消費者庁の資料・都道府県の窓口・専門家に確認する(この記事は法的助言ではありません)