結論:判断は「費用」ではなく「時間単価×かかる時間」で決める

「自作なら無料、依頼なら数十万円」という比較は、店主の時間を0円と見なしています。しかし店主の時間は、お店で最も高いコストです。まずこの前提をそろえます。

店主の時間単価を出す

計算は簡単です。「1か月の粗利(売上から仕入れなどの原価を引いたもの)÷ 店主が1か月に働く時間」が、店主の時間単価の目安になります。粗利ではなく「自分が接客や施術をしたときに1時間で生む売上」で考えても構いません。厳密である必要はなく、「自分の1時間には値段がついている」と意識することが目的です。

自作の本当の費用

自作の費用は、次の式で考えます。

自作の費用 = ツールの利用料 +(店主の時間単価 × 自作にかかる時間)+ 完成が遅れる間の機会損失

たとえば時間単価が仮に3,000円、自作に60時間かかるなら、時間の費用だけで18万円になります。これは仮の数字ですが、多くのお店で「自作は思ったより安くない」ことが分かる計算です。加えて、公開が数か月遅れれば、その間に検索やGoogleマップから来るはずだった人を逃しています。

判断の基準を表にする

状況 向いている選択
店主の時間に余裕があり、パソコン作業が苦にならない 自作
開業前で、まだ売上が立っていない 自作、または月額制の依頼
営業中で、店主が現場に立っている 依頼
公開を急いでいる(開業日・移転日が決まっている) 依頼
予約ページや多言語など、機能の要件が多い 依頼
一度作ったあと、自分で更新したい ハイブリッド(土台は依頼、更新は自分)

自作にかかる時間と学習コスト(見落としがちなデメリット)

「テンプレートを選んで文章を入れるだけ」と言われる作成ツールでも、実際にはやることが多く、初めての人ほど時間がかかります。作業を分解して、どこに時間が消えるのかを見ておきます。

自作の作業一覧と時間の目安

作業 内容 初めての人の目安
ツール選び・契約 比較、アカウント作成、プラン選択 数時間
ドメイン・接続設定 ドメイン取得、ツールとの接続、SSL 数時間(つまずくと数日)
構成・文章 ページの決定、お店紹介・メニュー・アクセスの文章 十数時間
写真 撮影、選定、明るさの調整、サイズ変更 十数時間
デザイン調整 テンプレートの編集、スマホ表示の確認 十数時間
公開前チェック リンク切れ、誤字、Googleへの登録 数時間

合計すると、初めての人で数十時間になることが珍しくありません。あくまで目安で個人差は大きいですが、「週末に1日で作る」つもりで始めて、数か月たっても未完成、というケースは実際によくあります。

学習コストは「作った後」にも続く

自作のデメリットとして見落とされがちなのが、作った後の学習コストです。ツールの仕様変更への対応、表示がおかしくなったときの原因調査、ドメインやSSLの更新、セキュリティの確認は、すべて自分で調べて対応することになります。相談相手がいないので、1つのトラブルで数時間が消えることもあります。

「安く見える」ツールの落とし穴

無料や低価格の作成ツールには、制約がつくことがあります。独自ドメインが使えない、広告が表示される、ページが増えると重くなる、他のツールへの引っ越しが難しい、などです。制約の詳細は「無料ホームページ作成ツールのデメリット」で解説しています。プランや条件は変わるので、最新の内容は各ツールの公式サイトで確認してください。

自作が向いている人・依頼が向いている状況

どちらが正しいということはありません。お店の状況と店主の性格で決まります。

自作が向いている人のチェックリスト

次の項目に多く当てはまるなら、自作でうまくいく可能性が高いです。

  • パソコンやスマホの設定作業が苦にならず、調べながら進められる
  • 開業前など、まとまった時間(週に数時間以上)を数週間確保できる
  • 文章を書くこと、写真を撮ることに抵抗がない
  • 必要なのは基本的なページ(お店紹介・メニュー・アクセス・お問い合わせ)だけ
  • 完成後も自分で更新し続けるつもりがある
  • 多少デザインが素朴でも、情報が正確なら良いと割り切れる

依頼が向いている状況

  • 営業中で、店主が現場に立っていて時間が取れない
  • 開業日や移転日が決まっていて、公開の期限がある
  • 予約システムの連携、複数店舗、多言語など、要件が複雑
  • 「作ったのに問い合わせが来ない」経験があり、構成や導線から見直したい
  • 更新や不具合対応を相談できる相手がほしい
  • パソコン作業にストレスを感じ、本業に集中したい

依頼にも、「業者選びに時間がかかる」「費用がかかる」「意思疎通に手間がかかる」というデメリットがあります。制作費の相場と内訳は「店舗のホームページ制作費用の相場」を参考にしてください。

依頼するにしても、自分でやるべきこと

依頼する場合でも、写真・ロゴ・メニュー・お店の紹介文の素材は、お店側で用意するのが基本です。「何を伝えたいか」「誰に来てほしいか」を決めるのも店主の仕事です。この部分まで丸投げすると、どこにでもあるサイトになります。

途中で切り替える方法(自作→依頼、依頼→自作)

一度決めたら変えられないわけではありません。切り替えるときに困らないように、最初から準備しておくポイントがあります。

自作から依頼に切り替えるとき

自作を始めたが完成しない、公開したが問い合わせが来ない、という状況なら、切り替えの検討時期です。次の3つを引き継げるようにしておきます。

  1. ドメイン:自分名義で取得しておく。ツールに付属するドメインだと、引っ越しで使えないことがある
  2. 文章と写真:ツールの中だけでなく、手元のファイルにも保存しておく
  3. Googleビジネスプロフィール:ホームページのURLを新しいサイトに切り替える。ドメインが変わる場合は、古いURLから新しいURLへの転送を業者に相談する

自作したサイトの素材は、依頼先にそのまま渡せば制作の時間短縮につながります。「自作した時間は無駄だった」と考える必要はありません。

依頼から自作(自分で運用)に切り替えるとき

制作会社との契約が終わる、月額の費用を見直したい、という場合は、次を確認します。

  • ドメインとサーバーの名義が誰か(自分名義でなければ、移管できるか)
  • サイトのデータ(文章・画像・設定)を受け取れるか
  • 自分で編集できる仕組み(更新画面)があるか
  • 契約の最低期間と解約の条件

契約時にこれらを確認しておくと、切り替えの自由度が保てます。制作会社の選び方と、見積り前に聞くべきことは「制作会社の選び方」で解説しています。

ハイブリッド案:土台は依頼、更新は自分で

多くのお店にとって現実的なのは、「作るのは依頼、育てるのは自分」という分担です。自作と依頼の良いところを組み合わせられます。

分担の例

項目 依頼する 自分でやる
サイトの構成・デザイン・導線
スマホ対応・表示速度・SSL
地域名を意識したページ設計
お店の紹介文・メニューの中身 整えるのは依頼先 ◎ 原稿は自分
写真 プロに頼む場合も ◎ スマホで撮る
お知らせ・季節メニューの更新
Googleビジネスプロフィールの投稿・口コミ返信
不具合・仕様変更への対応

月額制という選択肢

初期費用を抑えて依頼したい場合、月額制(サブスク型)の制作サービスがあります。制作費を分割する形で始められ、修正や運用サポートが月額に含まれることが多い反面、最低契約期間や解約時の扱いなど確認すべき点もあります。買い切りとの違いは「月額制ホームページ制作のメリット・デメリット」で整理しています。

どちらを選んでも変わらないこと

自作でも依頼でも、来店につながるサイトに必要なことは同じです。「誰に来てほしいか」がはっきりしていること、料金・アクセス・予約方法が正確であること、Googleビジネスプロフィールと連携していることの3つです。地域ごとの検索の考え方は「地域別ガイド」を参考にしてください。

よくある質問

ホームページの自作には、どれくらい時間がかかりますか?

初めての人で数十時間が目安です。ツール選び、ドメイン設定、文章、写真、デザイン調整、公開前チェックのそれぞれに時間がかかり、個人差も大きいです。「週末1日で完成」を想定すると、多くの場合は予定より長引きます。

自作のいちばんのデメリットは何ですか?

店主の時間が大量に消えることと、完成後のトラブル対応や仕様変更を自分で調べて解決し続ける必要があることです。公開が遅れる間の機会損失も見えにくいコストです。

自作で始めて、あとから依頼に切り替えても問題ありませんか?

問題ありません。ドメインを自分名義で取得し、文章と写真を手元にも保存しておけば、切り替えはスムーズです。自作した素材は依頼先にそのまま渡せます。

依頼した場合、自分でやることは何もありませんか?

写真・ロゴ・メニュー・紹介文などの素材の提供と、「誰に来てほしいか」を決めることは店主の仕事です。公開後のお知らせの更新やGoogleビジネスプロフィールの運用も、自分でやるほうが早く、お店らしさが出ます。

まとめ

  • 自作か依頼かは、制作費ではなく「店主の時間単価×かかる時間」と「完成後に手が回るか」で決める
  • 自作は初めての人で数十時間が目安。作った後もトラブル対応や仕様変更の学習コストが続く
  • 自作が向くのは、時間に余裕があり、設定作業が苦にならず、更新を続けるつもりのある人
  • 営業中で時間がない、公開の期限がある、要件が複雑なら依頼が向いている
  • 切り替えに備えて、ドメインは自分名義、文章と写真は手元にも保存しておく
  • 現実的なのは「土台は依頼、更新は自分」のハイブリッド。どちらでも情報の正確さとGoogle連携は必須
この記事を書いた人:坂部 幸成(さかべ ゆきなり)

株式会社Shamoji 代表/店舗向けホームページ制作「HARE PAGE 店舗」運営

Web制作・運営、広告運用代行、SEO・LLMOコンサルティング、AI活用支援を手がける 株式会社Shamoji(2022年設立)の代表。店舗向けホームページ制作・運用サービス「HARE PAGE 店舗」を企画・運営し、飲食店・美容室・サロン・整体院・不動産会社のサイト制作と地域検索の設計を担当しています。記事の内容は執筆時点の一般的な情報であり、各サービスの最新の仕様・料金は公式情報をご確認ください。